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2006.10.30 02:20|いつか見た あの場所で

人物設定 遥


さてさて皆様、こんばんは。


いつもなら寝ているこの時間。かぜっぴきのkazuはのどが痛くて溜まりません。
あめをなめならが、のどの痛みがなくならないか、起きております。
そんで絵を描いたりしてるから、なおんないんだろうな、と思ったりして。

今日は人物設定、遥です。


柳 遥(りゅう よう)


水を操る家系の生まれ。東を束ねる族長です。
音読みと訓読みが乱立していますが、はっきり言って、遥の名前は今考えました。
雷 遥の候補もあるのですが、どれがいいですかね。
これのがいいっていうご意見がありましたら、コメください。
変えるかもしれません。

身長 180cm
体重 68kg
血液型 A型

遥


封印宮にかくまわれ宵の元で暮らしていましたが、日々、鍛錬だけは積んできました。
死んでいった部族の仲間の為に、いつか葉影を討つことを目的に。
それ以外は隠し事のない、あるいみ相馬のような男です。




呉羽のイラストもできたので、upしますね。
はー、自己満足343


体はかけないので、ご容赦を。。。
呉羽

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テーマ:自作小説
ジャンル:小説・文学

2006.10.28 19:19|いつか見た あの場所で

3人が出て行った後、部屋は静かになった。
のぼーっと窓の外を見る。
中空には、細い三日月。鋭い光が窓から差し込む。

・・・、表現力ねぇ。

自分で思ったものの、国語力のなさに溜息をつく。
「予備校か。」
そういえば、ここに飛ぶ前、10月の終わりだったよな。
冷たい風が吹いていたけど、その分、空気が澄んでて、月がきれいに見えた。

「母さん、心配してるだろうな・・・。」
最後に聞いた、母親の声が耳にちらつく。
久しぶりに思い出した、かも。
いろんなことがあって、ゆっくり考えること、できなかったから。


「相馬様・・・?」
その声と共に、扉が少し開かれて沙綾が顔を出した。
俺は突っ伏していた体を起こして、沙綾のほうをみた。
「具合は如何ですか?」
沙綾の手には、白いティーポット。おかわりを持ってきてくれたみたいだった。
「あぁ、すんません。ごはん、あまりにもおいしかったもんで。」

沙綾は笑いながら、カップにお茶を注いだ。
「いえ、台所を預かる者が喜んでおりましたわ。おいしそうに食べてくれるって。」
ポットを置いて、窓に寄りかかる。

「大体、兄様からお話は伺いました。この世界を救ってくださるとか・・・。」
少し真剣な顔つきに変わる沙綾に、なんとなく照れてしまう。
「いや、そんなたいそうなことじゃないっすよ。俺は、一体どうしたらいいかなんて、わかんないっすから・・・。」
首に手をやり、視線を泳がせる。

なんちゅうか、呉羽さんそっくりってのもあるけど、緊張する・・・。

「あー、烈・・・さんは、何かいってたっすか?」
なんとなく話題を探して、話しをつなげる。
沙綾さんは、軽く笑って頷いた。
「いろいろと伺いましたわ。・・・顔は恐いけど素直なやつだって、相馬様の事。」
・・・
「顔は恐いはよけいっす。まぁ、いいんですけどね。」
くすくすと、沙綾の声がする。
「恐くありませんのにね。それを言うなら、兄様のが恐いと思いますわ。」
「そうっすよね!そうだよ、軍人さんの方が恐いよな・・・。」

「相馬様、普通にお話になってくださいな。私こそ、そんなたいそうな者ではありませんから。」
そう微笑む沙綾は、ゆっくりと窓を開けた。
ひやっとした風が、部屋の中に入り込む。
風を受けて、収納の上にある白い花が、少し揺れた。

「相馬様、私達のこと、兄様から聞かれたのでしょう?」
西のこと・・・?
首をかしげながら頷く。
「私はね、そのときに死んだと、思っているの。」
「沙綾さん・・・?」
突然・・・、何を・・・?
理解できない俺は、名前を読んで返答を待った。

沙綾は自嘲気味に笑うと、俺の方を見た。
「呉羽様に助けられたとはいえ、族長から死刑宣告を受けたと同じよ。でも、呉羽様は私にこの宮を護る役目をお与えくださった。
族長から見捨てられた私や兄様に、生きがいをくださったの。」

「生きがい・・・。」
「そう。」
そう頷く沙綾さんは、夜の闇の中に溶けていきそうなくらい、寂しそうだった。
とても寂しそうで・・・。

「相馬様。烈兄様を、よろしくお願いしますね。兄様は強がっていますが、私より切り捨てられたことがしこりとなって残ってます。あなた方を助けることで、兄様のしこりが消えるかもしれない。私は、そう願ってるのです。」

「沙綾さんは・・・?」

烈のこと、ばかり・・・心配してる。自分は?

沙綾は一瞬目を見開いたが、すぐ表情を戻した。
「私にはこの町があります。呉羽さまもいます。意外と女性って、都合よくできているのですよ。」
そういうと、窓を閉めた。

「嘘だ。」

つ・・・と、言葉が出た。
ゆっくりと、椅子から立ち上がり沙綾の前に立つ。

「・・・相馬様・・・?」

「沙綾さん。記憶って、そんなに都合よくできないもんだよ。」

沙綾は、俺の顔をじっと見つめた。

俺も、見返す。

「だって、寂しそうだよ。沙綾さん。都合よく忘れるなんて、できないだろ。」
そんなことできたら、苦労しないよ。
俺の声だけ、部屋の中に響く。

沙綾は黙って俺を見ている。
「沙綾さん。」

「・・・・。」

どのくらいの時間だろう。

沈黙を破ったのは、沙綾さんだった。
ゆっくりと俺の隣をすり抜けて、扉を開ける。

「沙綾さん。」

その言葉に、振り返らず呟いた。

「・・・本当に、・・・・素直な方ですのね・・・。」

2006.10.27 18:27|いつか見た あの場所で

「だめ、もうおなかいっぱい。」
ぱんぱんにご飯を詰め込んだ胃を手のひらでさすりながら、苦しそうに呟く。


夕食は、2階の部屋でとった。
2階は、他の町の長とか呉羽の宮から派遣されてきた人とか、そういう人が泊まる宿泊場所だった。
部屋は5部屋に分かれていて、1部屋が食事をする為の部屋。キッチンや洗濯場は1階の裏手にあるらしい。
宿泊者たちの面倒を見る人が、2.3人いるらしく、食事中もせわしなく料理を持ってきたり、部屋の外の廊下を走っていたりした。

突然の来訪者の為、あわてて部屋の用意をしているらしい。
遠野が沙綾さんに礼を言うと、沙綾は真っ直ぐに遠野を見て笑った。

「遠野様は、礼儀正しくていらっしゃるんですね。」

その言葉を、遠野はなんだか複雑な表情で聞いていた。


「お前、食べすぎなんだよ。」
食事を終え、沙綾の部屋に戻ってきた俺たち。
食べすぎで椅子でのけぞってる俺をよそに、3人は窓際で何か話をしていた。

「だって、旨かったんだもん。」
その答えに、遠野が肩を揺らして笑っていた。

「まったく。お主、それでも救世主の自覚はあるのか?遠野、何かいってやらぬか。同じ救世主であろう。」
遥は遠野のほうをみて、俺に視線を走らせた。

「もしものときに、暴飲暴食で歩けませんとか言う救世主、私は嫌だぞ?」
「はははっ。」
遠野が、今度は声を上げて笑い出した。

「そーちゃん、そーちゃんは本能のままなんだよねぇ。食べたきゃ食べる!ねたきゃねる。」
・・・
「遠野、お前馬鹿にしてる?」
なんだか腹立ってきた。
いきまくと余計腹が痛いけど。

遠野は口端をあげて軽く笑うと、首を振った。

「それが大事よ?いろんな殻に込められた心じゃ、思うままに生きられない。」
「・・・・?」
えーと。
「皆はそうだってこと?」
その言葉に、遠野たちは顔を見合わせた。

「大人だってことだ。」

合唱のよう・・・。
3人から一斉に言葉を返されて、肩をすくめた。

えーえー、どうせ俺はお子様ですよっ。

3人から視線をはずし、沙綾さんが入れてくれた飲み物を少しずつ流し込む。
沙綾さんが入れてくれた、胃の消化を助ける・・・俺達の言葉で言うとこのハーブティー・・・?
少しレモンのにおいがした。

「とにかく、少しまわってみよう。」

「?」
3人が、何か結論つけたように窓際から離れ、薄いマントを手に持った。
「どうするの?」
よく意味が理解できないまま、遠野を見上げる。
遠野は一太に作ってもらったランニングの上から、薄手のマントを羽織った。

「少し、情報を仕入れてくるよ。この町は、南と西の交易都市にあたるらしいんだ。」
「じゃ、おれも・・・。」
そういって立ち上がろうとする腰を浮かせた俺の胃を、烈が軽くたたいた。
「うぉっぷ・・・」
その振動に、ぐらっと椅子の上に戻る。
「なにすんだよ・・・。」
ちょっと涙出たぞ!

烈はにやっと笑うと、マントをくるっと肩にまきつけた。
「俺達のように、簡単にアドリブできるお前じゃないだろ?いちいち顔に出されちゃ困るんだって。」
「なんだよ、それ。」
「お主に諜報活動は無理だと申しておるのだよ。」
遥のダメ押し。
遥と烈は顔があまりばれないように、大きめの襟のあるマントをつけている。
顔が襟に埋まって、よくわからない。

「ちゃんといい子に待ってるんだよ、そーちゃん?」
そういうと、遠野たちは扉の向こうに消えた。

テーマ:自作小説
ジャンル:小説・文学

2006.10.25 19:13|いつか見た あの場所で

「保身の為に・・・、烈の軍は・・・。」
「全滅だよ。俺と沙綾、あと一人か二人だ。生き残れたのは。俺と沙綾以外は記憶を消してもらっている。」

烈がはき捨てるように、呟いた。


「私は、その事を呉羽殿から聞いた。なんとも言いようがない。我ら東の為に、烈に申し訳ないことをしてしまった。」

遥の言葉に、東のせいではありませんと、烈は笑った。

「俺と沙綾は、名を変えた。神離様に見つからぬよう。死んだと思われているだろう。」
「でも、烈。見つからないようしているのに、よく、沙綾さんを、この町の長にしたね。」
遠野の突っ込みに、烈は笑った。

「そりゃ、町として発展してきたこのアウルの守護に、沙綾が命じられたとき、どうしようかと思ったが・・・。」

遥が、扉の方に視線を向けた。
烈は続ける。
「沙綾が行くと言い張った。だから、仕方なく許した。誇りでもあったから。新参者にそんな大役をって。」

そして、溜息をつく。
「神離様の、気持ちも分かる。西を全滅させるくらいなら、俺たちを犠牲にしたほうがいいと考えたんだ。仕方ない。・・・が、許せるものでもない。」
共に戦った、仲間を失った。


「東の軍はその時俺たちと別行動していたから、この事をしらない。そして、葉影は西の軍の事を、不問に付した。だから、この事をしっているのは、遥様や呉羽様を抜かすと、記憶のある俺と沙綾だけ。」

そして、遥を上目遣いで見た。

「俺はもう2度と西とかかわらないことだけを願ったんだが。遥様、本当に俺?」


話を戻す。
遥は、少し躊躇したが深く頷いた。
「そうだな・・・。味方にとは・・・、望まぬ。しかし、手を出さない約束だけは取り付けねば。」
「でも、界王に通報されちゃわない?」

「その恐れはある。だから、西への働きかけは、ある程度力が備わってからだが・・・。根回しはやらねば・・。」

「根回しっすか。」
烈、何度目の溜息だろう。
「烈。元、司令官のお前なら、知り合いも多いであろう?頼まれてくれぬか・・・?」
「司令官!!」
他のところにびっくり。

「偉い人なの?烈も?」
「そりゃぁお前、一つの軍を率いてたんだ。軍の中で、上から3番目くらいだったかな。烈。」
遥の言葉に、烈は苦虫を噛み潰したような、いやーな顔をした。
「もう、昔の事ですよ。切り捨てられた司令官ですからね。」


ただ・・・、と烈が続ける。
「神離様は、どちらかというと自己保身の方。商人から話を聞くところによれば、国の中に不穏な空気が出ていると聞く。そこを、少しつついてみましょうかね・・・。」

遥は、申し訳なさそうに、烈の肩をたたいた。
「とりあえず、西の事は烈に任せよう。そして、他の事だけれど・・・。」

遥は、再び紙にペンを走らせた。

「宵から聞いていることは、少ないが・・・。」

紙に「葉影」の文字と、「禪」の文字を書いた。
「この二人だ。」
「・・・・、なにか弱点でも、あるのかな・・・?」
遠野がじっと手元を見つめている。

遥は、難しい顔をして頷いた。
「弱点というか・・・。葉影は、人間だ。それはしっているな?」


遥の問いに、頷く。
「人間は、300年も生きられるのか?」
・・・
「生きられない・・・。っていうと・・・?」
俺の言葉の後に、遠野が続く。
「別人か、もしくは何らかの方法で、命を延ばしていると?」
「そう、その通りだ。遠野。」
羽ペンを置く。

「方法は分からぬが、命を延ばしているのだと思う。その方法を見つけ、阻止すれば、葉影は勝手に老いて滅ぶであろう。また、攻撃もしやすい。禪一人では、大きなことはできん。葉影の術力に頼るところは大きいのだ。」
「禪は?」

窓の向こうの空が、だんだん暗くなってきた。
俺は、ふと空に眼をやる。
こうしていると、予備校に行っていたころが夢のようだ。
こんな暗くなりかけの空、予備校への道のりで、よく見てたな。

「・・・相馬?」
「えっ。」
突然の呼びかけに、驚いて遥を見る。
「どうした?」
空見てたとは言えず、言い訳を探す。
「界王って選ばれた王って言ってたから、失脚させる方法もあるんじゃないの?」

遥は、聞いていないのを怒ろうとしていたのに、まともな答えが返ってきて、ちょっと面食らった。

「聞いておったのか。そう、この蒼空界は王を選ぶとき、ある、石、で決める。」
「石?」

意外な答え。
遠野が、興味深く腕を組み、あごに手をやる。

「前代が亡くなった直後、ある石が次代の元に現れるのだ。手のひらに乗るくらいの小さな石。深い藍色をした、透明度の高いきれいな石なのだ。」

サファイアみたいな感じ?

「界王は、この4つの国の族長の中から選ばれる。次代界王に選ばれた者のもとに、とてつもない光を伴いながらその石は現れるのだ。」

「それは、誰の意思?」
遠野が聞く。
遥は首をかしげた。
「本当に分からない。強いていうなれば、この界の意思。ただ、界王が存命中にこの石が消滅すると、界王は資格をなくす。一気に寿命を全うし、石と共に消滅する。そして、すぐに、新しい界王の元に石が現れるという仕組みになっているんだ。」

「じゃあ、石を消滅させればいいってこと?」
頷いた。
「ただし、どこにあるか、わからぬ。禪とて馬鹿ではない。見つかるような場所にあるとは思えぬのだが・・・。」

どっちにしろ、難しいってことか・・・。

沈黙が辺りを包む。

誰ともなく、溜息が漏れた。

その時、扉が少し開いた。
「皆様・・・。」

扉を見ると、沙綾さんが顔だけを扉から出して伺うように見ている。
「お食事の用意をいたしました・・・。如何ですか?」

烈が即座に席を立つ。
つられて俺達も扉に向けて歩き出した。

2006.10.24 18:24|いつか見た あの場所で

「西の族長?」
そのまま、鸚鵡返しで烈を見る。
烈は苦虫を噛み潰したように、溜息をついた。

「神離(ヒモロギ)様ですか。それは・・・、どうでしょうか・・・。」
???
「烈、しってるの?西の族長。」
なんだかよく知ってそうな、溜息だよな・・・。

烈は遥をちらりとみて、もう一度溜息をついた。

「俺に行けって言うんでしょう?遥様。」
遥は、苦笑いをしたまま頷いた。
「お前なら、すんなり西の地理、よくわかるであろう?申し訳ないとは思うが。」


嫌そうに、頭をかく烈。
「なんで、烈は西に詳しいの?」
素朴な疑問。

沙綾が、そっと席をはずした。
烈は沙綾が外に出るのを見計らって、俺を見た。

「俺は・・・、俺と沙綾はもともと、西の住民なんだ。」
・・・
「え?そうなの?訳ありなら、東の住人かと思った。遥と知り合いなんだろ?」
烈は上着のシャツを胸の下まで、いきなりめくりあげた。
「お兄さんっ、ご乱心?」

がんっ

俺の茶化しを、遥が殴った。
「相馬。お主、よく見るがいい。烈の身体を・・・。」
「いてぇなぁ。」
ぶたれた頭を自分でさすりながら、視線を烈に戻す。

「・・・、矢と・・・刀傷。いつの物なの?」
遠野が、眉をひそめて烈の傷を見る。
「遠野・・・、よくわかるな・・・。」
変なところに関心。
遠野は当たり前だろうというように、俺の頭を小突いた。

俺は、サンドバックか、このやろう・・・。

「300年前だよ。俺が神離様の命で、葉影からの攻撃を受けている南の封印宮に派遣された時、ついた傷だ。」
烈はそこまでいうと、服を戻した。
遠野は口に人差し指を軽く当てて考えていたが、遅くないか?と呟いた。
「そんなに時がたってて、直りきってないのか?その傷。」

「直りきってない・・・、よくわかったな。」
沙綾のことといい、お前の洞察力にはあきれるよ、と続けた。

「俺の、愚痴になっちまうけどよ・・・。」
遥をちらっと見る。
遥は、続きを・・・と窓の外に視線を移した。


「・・・覚えているか?遠野。お前には話したが・・・。」
「・・・?」
「西の国は300年前の戦いの折、封印宮や東の国が戦っていても、手を出さなかったということ。」
遠野は合点がいったように、頷いた。

「でも、本当は派遣されていたんだよ。たった2軍だけ。俺が率いていた隊と、後から来た族長 神離様の隊だ。」

俺は少ない人数ながら遥様の下に入り、東からの派遣軍として東と共に戦った。
その際、遥様と出会い、知り合った。
だが、葉影の軍隊は人数に勝る。そして、力も、悔しいが上だった。

俺は神離様に、援軍を請うた。
なかなかこなかったが・・・・。

そのうち、遥様が行く方知れずになり、死んだという噂が流れた。

「実際その時、重症で、呉羽様が見つけるまで動けずにいた。」
遥が、横から口を出す。

戦いは終盤に差し掛かっていた。目に見えて、こちら側の敗戦。
だがようやっと、神離様の軍隊が到着したのだ。

兵の士気は上がった。俺も、そして癒しの術を使えるが為に軍についてこさせられた俺の妹、沙綾もまた。

・・・神離様の軍隊が見えたぞ!
後方の兵からの伝令が、前線に届いた。
目の前には、葉影の軍。
葉影がはっきりと見える。

・・・これで、もしかしたら葉影を討てるかもしれない!
内心喜んだ、俺。

神離様の軍が、俺の軍の側についた。
・・・神離様!
駆け寄ろうとする俺の身体を、一本の矢が貫く。
・・・え?

何が起こったのかわからなかった。
味方・・・のはず・・・

かすみはじめた目に、沙綾の姿が映る。
「兄様!」
その声に手を伸ばそうとした瞬間、

・・・沙綾!

神離様が、沙綾ごと、俺を剣で突き刺した。


「そこからの記憶はない。気付いたら、呉羽様の宮にいた。」
なんだか、辛い記憶・・・。
でも・・・
「何でその傷、治りきってないの・・・?」
烈は、服の上から傷をなぞった。

「俺がすぐ動けなくなるように、術をかけた矢傷らしい。そこまでして、神離様は俺を殺したかったんだよ。」

「・・・、なぜ?」
遠野が一言、問う。
遥が口を開いた。

「・・・負け戦だったからな。西の存続の為、烈の軍を切り捨て、葉影に従ったんだよ。勝手に軍を動かした賊徒と、したんだ。」
そいつが余計なことを言ったら、まずいだろう?
遥の口は重い。

2006.10.23 15:05|いつか見た あの場所で

「分かりました。コウ様の事については、見張りの者に伝えます。」
沈黙を破ったのは、沙綾さんの声だった。

「きっと何か理由がおありなのでしょう。」
そういうと、にこっと笑った。


その言葉を受けて、遥が頷く。
「確かに。魂の状態であるコウを攻撃することは難しい。葉影は界王の都におるだろうし。こちらはこちらで話を進めようか・・・。」


そういうと、沙綾に紙とペンをくれと手を出した。
沙綾は後ろにある木の収納の一番上の引き出しから、紙と羽ペンを取り出し遥に渡す。
インク壷は、遥の座っている席の前に、置いてあった。


俺と遠野は席を立ち、遥の側に近寄る。
俺達の席からじゃ、遥の手元が見えないからだ。

「・・・、むさっくるしいな。背の高い男ばかり。」
烈が、苦笑いをする。
俺を抜かして3人とも180cmは超えているだろう身長。
口には出さないけれど、沢村がいたら・・・と烈は言いたかったのだろう。


「烈、あんたもそのひとりだよ。」
遠野が軽く受け流しながら、答えた。
まったくだ、と遥が笑った。

「いいか。蒼空界は大海に1つの大陸が浮かんでいる。この陸だ。」
そういうと、足を一回、トンと踏み鳴らした。
「島とかないの?」
遥の書く大陸の線を目で追いながら、俺は呟いた。

「ない。基本的に蒼空界は、海に浮かんでいる。大陸の発する引力、そして宵の力で、大海の水と大陸をつなぎとめている状態なのだ。」

いびつな形の楕円形をした大陸の周りを、大きな丸で囲む。
「この大海の部分が、人間界と接しておるのだ。おそらく葉影は、この大海の中から人間界に降りるつもりだと思う。」

大陸の中心部分に1つ、丸。その周りを4分割した。
「いいか?この4分割した下の部分が、今いる南の領域だ。ほとんどが砂漠と化している。」

遥は、地図をみながら丁寧に説明してくれた。

南は、呉羽が統括する地域。南端に封印宮があり、斜め上に呉羽の宮。王都に向かう道のりに、ここ、アウルの町がある。

砂漠を越えると草原地帯が広がり、界王の国にたどり着く。

東は遥がかつて支配していた、国。
現在は廃墟と化している。
界王に逆らった逆賊の都という汚名を着せられ、都人は南や西に去っていった。
湿地帯が大半。

西は、山と草原の広がる国。
南との境には山が連なり、中心よりやや西側に、国の都がある。

北は、葉影が統括する地域。
大半を氷原が占め、あとは草原。
動植物はあまり育たない場所。


そして、真ん中に書いた丸。
これが界王のいる国。呉羽がとらわれている場所。

「簡単に説明するとこういうことだ。」
遥は書き込みながら、説明してくれた。

「界王を倒すには、西の族長を味方につけなければなるまい。」
・・・難しいことだがな、と溜息をついた。

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2006.10.23 11:10|いつか見た あの場所で

寒いですねぇ


kazuです。


PCうってたら、何か廊下のほうで、変な音が・・・。


まだ消えてません。


なんだろう・・・、そう思いつつ、恐いので見に行ってません。


時々イモリだかヤモリだかが玄関から入ってくるので、


その気もしますが・・・。


これ書き終えたら見てきます。


ではでは 今日の一詩


続きからどうぞ

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2006.10.22 10:11|いつか見た あの場所で

久々の、今日の一詩です。


なぜいきなりか!
今まで漠然と描いていた相馬達のいる蒼空界ですが。


この後は、ちゃんとした地図や距離、その他もろもろ細かく決めないと駄目じゃんという思いに取り付かれまして。


今のままでも書いてはいけるのですが(一応設定は作ってあるんですが)、時間軸がずれてかきずらいという思いを前回の章で体験したので、ちょっくらちゃんと調べることにしました。


ということで、何日か今日の一詩に変わります。
困ったときのストック頼みですねこりゃ。


早めに終わらせますので、すみません・・・。


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テーマ:自作小説
ジャンル:小説・文学

2006.10.19 22:31|いつか見た あの場所で

烈の後ろからついて歩いてきた、女性。
それは・・・、

「呉羽さん・・・・?」

呉羽さん、そっくりだった。
いや、呉羽さんじゃないの?

その女性は俺の呟きを聞いて、にこっと笑った。

「初めまして。私、烈兄様の妹、沙綾(サヤ)と申します。さぁ、皆様、宮の中へどうぞ・・。」

俺は、目が点だった。



沙綾さんが住んでいる宮は、清護宮と呼ばれる建物。
清らかなオアシスを護る、という意味で呉羽さんがつけたらしい。
呉羽さんの宮が5階建てだったのに対し、この宮は3階建て。

1階はこの町を統括する役所のような役目を果たしているらしく、何人もの人が木の机を前に羽ペンを走らせている。
俺達はその中を縫うように階段を上っていった。
階段には所々に蜀台が取り付けられていて、赤いリボンがふちを飾っていた。
そのまま三階まで上りきる。

扉は一つ。

そこを開くと、沙綾さんの私室だった。
中は3つに仕切られていて、ここからは見えないけれど奥に寝室。
呉羽さんのところにあるような、水鏡のある部屋。
そして、今俺たちが通された、居間。

大きな机が一つ。いくつかの椅子。
そして、木の収納が壁際においてある。

「白い花・・・。」
収納の上には、小さな小瓶にこれまた小さな白い花が飾られていた。

「どうぞ、お座りください。何かお飲み物をお持ちしますね。お疲れでしょう。」
沙綾はそういうと、階下に戻っていった。

「遠野、呉羽さんそっくりだね。沙綾さんて・・・。」
遠野は俺の隣の椅子に腰掛けながら、ふふと笑った。
「見かけはね。でも、呉羽さんとは全然違う。」

そうかー?凄いそっくりだと思うけど。
烈は遠野の言葉を聞いて、珍しそうに言った。
「遠野、お前凄いな。一見、誰もが見間違えるぞ?沙綾と呉羽様を。」
遠野は、そう?と軽く笑うと、右の手のひらに視線を落とした。
「沙綾さん、幸せそうだね。」

突然、よくわからないことを呟く。
この言葉に、俺達は首をかしげた。
「遠野?」
遥が、声をかける。
遠野はなんでもないという風に、笑った。

「沙綾は呉羽様と似ていることで、言葉は悪いが、何かあった場合は身代わりを勤めることになっているんだ。今回、呉羽様が界王の都に連れて行かれてしまったから、もう、その役目は消えるだろうけど。」
近くにいてこそ、身代わりもできるだろう?そう、話す烈は嬉しそうだった。

呉羽の事は心配だが、身内の事はもっと心配だろう。
妹が、危険な役目から遠のいたことは、烈にとっては安堵することなのだ。

「呉羽様は、嫌がっていたな。そのこと。」
遥が、腕を組んで溜息をついた。
「誰しも嫌だろうな。自分の代わりに死ぬ人がいるなんてな。」
「遥?」
なんだか悲しそうな遥の声。
遥はもう一度溜息をついた。

「300年前の戦で、私は身代わりの者に助けられ、今まで命を永らえておるのだよ。」


そうか、遥は族長。東の国一つを背に負った・・・・。

「お待たせいたしました。」
扉が開いて、沙綾がお盆に載せたカップを持って現れた。
一人ひとりの前に、飲み物を注いで回る。

「兄様、宮のほう大変なことになっているんですってね・・。」
烈の側に来た時、沙綾が聞いた。
「詳しい状況は入ってこないんだけれど、宮に入ろうとした商人が、入れなかったって・・。」

烈はカップを受け取ると、頷いた。
「俺たちも事が起こった時、その場にいなかったから分からないけど。コウが、こなかったか?俺達より先にこちらに向かったんだが。」

そうだ、コウ。何で帰ってこないんだろう。
沙綾は椅子に座ると首をかしげた。
「どうかしら・・・、まだアウルにはついてないと思うわ。迷ってしまったのかしら。」

烈がかぶりを振った。
「いや、実はあいつ・・・。」
コウの状況を説明する。
沙綾は、口を押さえて目を見張った。

「宮と連絡が取れないと思っていたのだけれど・・・。コウ様の守りの術が、宮を外界と遮断しているのね。商人が入れなかったのもその為・・・。」
烈が、辛そうに頷く。
その時に、なぜ、自分がその場にいなかったか。
後悔しても仕方のないことだけど。

「だからあいつは魂の状態でいるはずだから、道に迷うはずはない。」
遥を見る。遥は、その通りとでも言うように頷いた。

「俺たちがつけたんだから、迷うはずなんてないんだけれどねぇ。」
遠野が、続ける。
少し、沈黙が続いた。

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2006.10.18 22:16|いつか見た あの場所で

「コウさん、どうしたんだろ。」
夜営地を出発して、もう2.3時間は経つ。
コウは昨日偵察に行ったきり、帰ってこない。

遠野は俺の問いに、首をかしげた。
「うん、どうしたんだろうね・・・。連絡手段ないし、水場で待つしかないんだろうけれど。」
確かに。
この世界、携帯電話とかないもんね。

見渡す限り砂漠の風景にも、見慣れてきた。
一つ一つ砂丘を越えて、先に進む。
呉羽さんの宮では感じなかった、照り付ける陽の暑さが、容赦なく頭の中を朦朧とさせている感じ。
「遠野、お前大丈夫なの?」
ふと見ると汗ひとつかいていない遠野の脇をつついた。
遠野は少し振り返って、前に向きなおした。


「そーちゃん、俺の職業。覚えてる?」
・・・ボディーガード・・・
「訓練してるって事ですか。」
軽く頷く。そーですかー。辛いのは俺だけですかー。


ゆっくりと砂丘を登っていき、らくだの上で一つ溜息をついたとき、先を行く烈と遥が止まって俺たちを振り返った。

「見えてきたぞ、オアシスの町。アウルだ。」
その言葉にふと、目線をあげる。


今までの砂漠だけだった世界に、ぽつんとその町はあった。
真ん中にオアシスを抱き、緑の林に囲まれている。
いくつかの家屋が立ち並び、大きな道が交差している。


そしてそのオアシスのほとりに、呉羽さんの宮を数倍小さくしたような白い建物があって、俺の目を引いた。


「アウルの町。もう一度来れる日が来るとはのぅ。救世主に感謝せねばならぬな。」
そう遥はいうと、俺達のほうを見て笑った。
「あそこに、烈の妹さんがいるんだ。」
俺の言葉に、烈は間髪いれず答えた。
「お前にはやらんぞ。」


・・・


「だれがくれと言った。このお兄さん、展開早いっす。」
遥と遠野は俺達の会話に笑いながら、らくだをアウルの町に向けた。


-----------------------------------------------------------------


「結構、にぎわってるもんだね。」
アウルの町へは、すんなり入れた。
入り口は城門の様になっていて、周囲を城壁で囲まれてはいたが、簡単な口頭審査で入ることができた。
特に烈がいるので、ほとんどスルーのようなもんだった。

「あぁ、もうこの町ができて400年位かな。少しずつ商人が定着して、町の様相を呈したんだ。」
烈はひとところを目指して歩いている。俺達はらくだを引きながら、その後についていった。

人々は活気に満ち、道端では物売りが大きな声を上げて客を呼んでいる。
子供づれの母親、今この町に入ってきたのだろう旅人。
いろんな人がいて、人いきれでむんむんしている。

俺達は封印宮と呉羽さんの宮しかいたことがないから、見るものが、とても新鮮に見えた。
やっとこの世界を見れた気がする。

2.30分位か、歩いてたどり着いたのは、砂丘から見たとき一番目に付いた、白い建物だった。
「ここに、俺の妹がいるんだ。」
慣れた感じで建物の衛兵を呼ぶと、中に入っていった。
俺達は外で待たされたままだったが、仕方ない。
烈が出てくるのを待つ。

「すまん、待たせた。」
烈は少しして戻ってきた。
照れくさそうに頭をかきながら。
「やっと帰ってきたか。」
遥がらくだによっかかっていた体勢を戻しながら、苦笑いをする。

烈の後ろから、小さな影が一つ、ついてきた。
「?」
妹さんか?

「皆様、ようこそおいでくださいました。」

・・・・・

その言葉に絶句する。

「う・・・わ。」

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2006.10.17 21:28|いつか見た あの場所で

森を抜けて、すでに二日。
辺りは砂しかない。
振り返ると、遠くの方に森の上部分が微かに見えるが、それだけ。
見渡す限り、砂丘が続く。
すでに日は傾き始め、辺りを暗闇が包み込みはじめている。

「なんで呉羽さんの宮が沙穹の宮って呼ばれてたか、ようやく分かった気がするよ。」
暑さに耐えかねて、遠野と一緒に大きい布を一枚かぶりながら、俺は呟いた。
遠野はその声に、軽く笑った。

「砂・・・そして弓なり。そういう意味だったな、そういえば。沙と穹って漢字。」
こくんと頷く。
水場はあと一日、らくだの背に乗られてつく場所にあるそうだ。
各自の水筒と予備の水筒に水をつめてあるが、すでに半分ほどに減っている。
遥が配分を考えて分けてくれているが、・・・足らない・・。
我侭いえないけどさ。

コウはこの先の偵察に、先ほどから行っていていない。
烈と遥は昔話に花を咲かせているようだ。
俺たちにはわからない会話だった。

「烈、この先の水場に、お主の妹が住んでおるのだろう?」
遥がからかう様に、後ろから烈の脇をつついた。
「そうですよ、砂漠の中の貴重なオアシスですからね。呉羽様に守るお役目を賜ってます。ちょっとした町になっていますよ。」
烈の口調が変わってる。
やっぱり、遥は偉い人なんだなぁ。変なところに感心したりして。

「おい、お前達。死んではおらぬだろうな。」
遥がふと、こちらを振り返った。
1頭のらくだに2人乗っている体勢。俺は遠野の後ろに乗っている。
しかももう暗くなり始めているのもあり、遥の姿はよく見えない。

「勝手に殺すな。」
むすっと、答える。
遠野が横目で俺を見て、噴出した。
「遥さん、こっちは大丈夫。」
「そうか。」
にやっと笑って、俺の方をのぞき見た。
「相馬が辛そうに見えたのだがな。はは、もう少しだ。」
「だから大丈夫だっての。」

そんな俺の声も、遥には遠吠えにしか聞こえないようだ。

「なぁ、遥さん。この先どうして行くか、そのオアシスの町で細かく決めよう。」
遠野が、少しまじめな声になった。
まだ、どうして行くのか決めていない。
先の展望が分からないんじゃあ、やりにくい。

遥は、前を向いたまま頷いた。
「そのつもりだ。オアシスに入れば、呉羽様がかけている守りの術もあろう。葉影に少しでも知られないよう、万全を期したい。」
「そう。」
遠野は、遥の言葉に頷いた。



そして次の日、俺達はオアシスの町を目前に、夜営地を出発した。
偵察に行ったコウはまだ戻ってこない・・・・。


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2006.10.16 12:15|いつか見た あの場所で

呉羽のいる沙穹の宮、宵のいる南の封印宮は、砂漠に囲まれた地域に存在する。
蒼空界南一帯は、ほぼ砂漠。
封印宮を取り囲む森だけが、唯一の動植物のすむ森なのだ。

沙穹の宮は封印宮の森と地下でつながっている水脈があるため水に困らないが、基本的に点在するオアシスに頼るしか、水を確保できない。
それは、遥が族長だろうが俺たちが救世主だからといって、関係ないわけで・・・。


沢村が牢に消えた後、俺達は遥を伴い、封印宮を出発した。
一太が飼っていた、(本人は友達だと言い張ったが)らくだを2頭借りて。
3頭いたのだが、あとから追いついてくるだろう沢村のため、1頭は残した。

砂漠のキャラバンが持っていそうな羊の胃袋で作った水筒、食料、各々毛布。一太が全て用意してくれた。

「宵様に、言いつかってたからさぁ。あと、これ。」
礼を言った俺たちに、一太が差し出した物。
それは・・・

「洋服・・・?」
遠野と顔を見合わせる。
どうしたの?これ・・・。」
遠野が少し嬉しそうに聞いた。
「宵様が、絶対欲しがるだろうって。簡単なものしか作れないけど、使って。」
「・・・一太が作ったの?!」
びっくりー。そんなことできそうに思えないんだけど・・・。
一太は満面の笑みで、頷いた。
「宵様の思うイメージを覚えて、作ってみたさぁ。」
ここでは全部自分でやらなきゃいけないから、そう続けた。
ランニングシャツとこちらの世界よりもジーパンに近いズボン。
もちろん金具とかついてないけど。

そして、一太は封印宮に残った。宵様の側は離れないと言い残して。
でもそれは、誰もいない宮に一人で残るというわけで。
宵と沢村の意識とつながることができないということは、話す人もいないというわけで。

一緒にって誘ったけど、やっぱり残ると言って笑った。

俺達は、何も言えなかった。





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2006.10.13 14:37|いつか見た あの場所で

「沢村!」
突然の事に驚いて、牢にしがみつく。
遠野と烈は、そのまま俺の隣に駆け寄った。

「今、ここに沢村いたよな?」
遠野が俺を見る。
俺は頷いて、牢の空間をたたいた。


「宵!沢村を戻してくれ!まだ何も話し合ってない!」
遠野は何が起こったのかわからず、俺と牢を交互に見ている。
烈は俺達の側を離れて、コウの方に向かった。
「コウ、一体何が起きたんだ・・・・?」
「烈・・・。」
コウも動揺を隠し切れない。
「・・・烈。久しい。」
その言葉に烈は、コウの隣に立っている遥を見た。
「・・・遥様?」
その言葉に頷く遥を、烈はぎゅーっと抱きしめた。
「生きてたんですか!遥様。よかった!」
遥は、思い切り烈の体を引き剥がす。
「くるしいっ!」

俺と遠野はそんなやりとりも聞かず、ただ牢に向かって・・・実体の宵に向かって叫んでいた。遠野には、手短に理由を話す。

「一太!」
ぴんと閃いて、少し離れたところにいる一太に駆け寄る。
「俺をもう一度この中に入れてくれ!沢村を連れ戻す。」
一太は無表情に、かぶりをふった。
「無理。宵様、沢村を受け入れた・・・・。」

「こんな離れ方ってありかよ・・・。」
一太が駄目じゃ、どうすれば・・・?

遠野は沢村を姿を探すように、必死に牢の中を探している。

「・・・、僕が適任だと思います。」
「っ、一太?」


突然、一太の口から沢村の声が流れ出した。
一太の肩を掴む。
「沢村!戻ってこい!」
遠野も側に来て、一太を掴む。
「沢村?」

「・・・、力・意思・術力がこの戦いには必要・・・。ならば僕が術力に一番適任だと思います。」
「沢村・・・。」
「僕は皆さんの役に立ちたい。そして今、自分がやるべきことがわかりました。遠野さんが来たら、反対されちゃうでしょ?」

苦笑い気味の声。

「だからって・・・!突然行くんじゃねぇよ。」
俺の声に、一太の表情が少し変わる。
「・・・、沢村は、我・宵が預かった。遥と共に、この世界を守る戦いを始めよ。沢村は来るべきときまで、我が預かる・・・・。」

そこまで言って、一太が元の表情に戻った。
「・・・宵さま!?宵さま!!」
俺たちと同じように、牢を2.3度たたいた。

「どうした・・、一太。」
一太は、牢の方を見たまま呟いた。

「宵様の意識とコンタクトできなくなった。牢の内側を隔離したんだ・・・!」
俺達の周りに、コウや烈達が集まってくる。
「沢村を修行させる為、最善の保護策をとったのだろう・・・?もう、こうなるとわれわれから宵に呼びかけることはできぬ。」
遥が、一太の頭をなでながらなだめるように言った。
一太は歯を食いしばって、たっていた。

「どうして、やっと3人になったと思ったのに・・・!」
俺は心の中の憤慨を抑えられずにいた。
どうしてこう・・・、しかも自分ひとりで決めやがって・・・。

「・・・、相馬、わかってやろう・・・。沢村が、独りで決めたこと。俺達は沢村を信じるだけだ。」
「遠野・・・。」
一番怒り狂うだろうと思っていた遠野が、存外落ち着いているのでびっくりした。
「もっと怒ると思ってたのに。」
遠野は牢を見上げると、軽く頷いた。
「いかろうと思ったけどね。沢村の言葉、凄い意思を感じる。あいつが任せておけって言ってるんだ、俺達は俺たちにしかできないことを始めよう。」

と、遥を見た。
「遥、俺たちと共に立ち上がってもらえるだろうか?」
突然話をふられた遥だが、にやっと笑って答えた。

「当然だ。」




俺達の長い旅は、始まったばかり・・・・。

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2006.10.11 21:59|いつか見た あの場所で

沢村達の後方。
牢の中の空間で、俺は沢村がこの部屋に入ったのをしった。
「・・・相馬、聞いたか?」
沢村達の到着を、宵は教えてくれた。
そして、一太をかいして、話を聞いた。


「遥は東の族長だったのか・・・。」
宵は、頷いた。
「族長と聞いても、直らないその言葉遣い。見上げたものだな・・・。」
「もう、そう呼んでるし。」
それよりも・・・


「沢村は、もう決めておったようだぞ?一太が心を読んでおる。沢村の思いは、真剣のようだ。汝は、決めるのに時間がかかったがのぅ・・。」


そう、これ。もう、沢村の中では決めていたんだ・・・。
救世主・・・、この世界を助けることを。自分の世界を守ることを。


俺だけ、うだうだしてたんだな・・・。


はっきりという沢村を見て、ほんと・・・少し寂しくなった気持ち・・・。

「遠野と申すものも、もうすぐこの部屋に来るであろう。近道を通させておるゆえ。」
「宵・・・。」
宵は、苦笑いを浮かべ俺のそばから離れた。

「よい。汝の反応が、一番素直だ。あの者たちは、あの者たちが隠す事柄ゆえ、現実の世界に執着がないのかもしれぬ・・・。さぁ、牢から出るといい・・・。」
宵に促されるまま、牢の前面の壁に手を触れた。

吸い込まれるような感覚。

「・・・汝、己を見失うことなきよう・・・。」

宵の声が微かに聞こえた。


「!相馬さん!!」

次の瞬間、俺は牢の外側にいた。
牢の中には大きい体・・・実体の宵がゆっくりと目を開けるところだった。
沢村は、突然牢の外側に出てきた俺の側に駆け寄ると、心配そうに体を見た。

「どこか怪我とか・・・、大丈夫ですか?」
「うん・・・、大丈夫。沢村は?」
沢村はその声に、満面の笑みを浮かべた。
「大丈夫です。」
そんな沢村を見て、心の中で踏ん切りをつける。
考えたってしかたねぇ。いいんだよ、俺は俺。沢村が決めていようがいまいが、俺もやると決めたんだ。これから頑張ればいい。
遠野ももう、自分の意思は決めてるだろうし。

「宵様が、お二人に言いたいことがあるって・・・。」
一太がつかつかと牢に駆け寄り、俺たちに声をかけた。
「言いたいこと?」
俺が尋ねると、力いっぱい頷いた。

「・・・、汝ら二人・・・。これからそちらはこの世界を救う為、戦っていかねばならない・・・。それには力・・・意思・・・そして、術力が必要だ・・。」
さっきとかわって、ゆったりした口調。

「術力といわれても・・・。僕達はただの人間です。」
沢村が、一太に向かって答えた。
「・・・、今から習得してもらう。一人、この牢の中に残れ。これ以上ない苦しみを味わうかも知れぬが、習得してもらわないとならぬ。」

・・・
「宵!それは・・・、やるなら俺たち3人でやる!遠野が来るまで、待ってくれ!」
牢の中の宵は、あまり動かない。
「・・・・、駄目だ。3人ではなく、1人のみ。誰がやるか・・・、もう遠野とやらもくる。すぐそこを走っておる。好きに決めるがよい・・・。」

俺は沢村を見て、頷く。
「もう少ししたら、遠野もくるから、それから決めよう・・・。」
沢村は、その言葉に俺を見た。

「・・・宵さん・・・。」
そのまま、牢に近づく。
「沢村・・・?」

その時、扉から遠野が駆け込んできた。
「相馬!沢村!!!」
遅れて烈も駆け込む。
「遠野!」

久しぶりの顔に、嬉しさを隠せず笑みがこぼれたそのときだった。


「僕が行きます。」

沢村の声。

突然の言葉に驚いて、沢村を見たのと、沢村が牢に手を置いたのは同時だった。

「よい。」
宵の短い言葉の後、沢村の体は牢に消えた。

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2006.10.10 18:51|いつか見た あの場所で

「相馬さん!!」
部屋に駆け込んだ沢村は、信じられないものを目にした。

青い空間の牢の中にいる、大きい物体と相馬。
その牢の前には、小さい子供と男性がこちらを振り返ってみていた。

「相馬さん、なんで牢の中に・・・?」
沢村は早足で牢に近づき、青い空間に手を触れた。

冷たい・・・・。
冷たい空気が、牢の周りを取り囲んでいる。
コウは沢村の後ろから牢に向かいながら、横に立っている男性の顔をまじまじと見た。

「・・・あなた様は・・・、もしかして・・・?」

見覚えのある顔。
しばらく拝見していなかった、もうこの世にはいないと思っていた人・・・・。

「・・・、サナ族のコウか?久しい。」
「東の族長、遥様!」

叫んで、片膝をつきかしこまる。
でも、目線はしっかり遥の姿を見ていた。

「コウ、覚えていてくれたか。ありがとう。」

一太は、にっこにこと笑っている。
沢村は、相馬のほうを見つつ、コウと遥のほうにも視線を走らせていた。

分からない状況を、必死に理解するように。

「遥様。生きておいでだったのですね。300年前の戦いの折、葉影に倒されたものと・・。」
遥は、苦笑い気味に軽く笑うと、コウに立ち上がってよい、と告げる。

「確かに重傷を負ったのだが、呉羽殿に助けていただいた。そして、封印宮の主である、宵にかくまってもらっていたのだ。」

「コウさん?」
沢村が、不思議そうにコウに声をかける。

その声に、遥が沢村に話しかけた。

「相馬は宵・・・ここの主と話しているだけだ。少し落ち着くがよい。」
沢村はもう一度相馬を見て、牢から離れた。
「沢村殿、こちらは東の国の族長、遥様でございます。」
「東の国・・・。」
滅んだという・・・・?

遥は、フルネームを 柳 遥(リュウ ヨウ)といい、東の国の族長だった。
300年前、界王と葉影によって滅ぼされた国。
南の少数民族たちが同じように葉影たちに攻められていることを聞き、残った兵達をまとめてこの地にやってきた。

そして・・・

「やはり力足りなくてね、全滅したよ。わが国は。国なくして、生き延びる事がこんなに辛いとはおもはなんだ。」」
「遥様・・・。」

少しうつむき加減の遥に、コウが声をかける。
遥は何か踏ん切りをつけて、沢村を見た。

「だが、生きていてよかった。救世主と会えたのだからな。お主、相馬の仲間なのであろう?救世主になるのであろう?」
沢村は、頷いた。

「はい。僕はこの世界も自分の世界も、なくなって欲しくないですから。」

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2006.10.07 00:13|いつか見た あの場所で

その頃、沢村とコウは見えない壁に阻まれていた。

「もう、どの位経ったでしょうか。」
沢村がたたいてもびくともしない、透明な壁の前に座った。
コウは、困ったように首をかしげ、もう一度壁を見た。

何も見えないけど・・・。意志の力を感じる。

「多分、宮の主が意図的に私達を足止めしているんでしょう。」
そうであれば、あがいても仕方ないというもの・・・・。
「遠野さん、起きてしまいますね。これじゃ。」
沢村には、一つ、考えていたことがあった。

どれだけ遠野を、精神的に頼りにしているか。
それは、人間の世界にいた頃からそうだった。

だからこそ、今、相馬が何か困難なことになっているならば、遠野が来る前に解決できないものかと思っていたのだ。
なのに、足止めを食って数時間。もうお昼近くなのではないだろうか・・・。

「困りましたね・・・・。」


ため息をついて、壁にもたれかかった。

・・・
「沢村殿!」
コウが、突然大きな声を出すのと、
「えっわっっ。」
沢村が素っ頓狂な声を出して、頭を床にぶつけるのと、同時だった。

「大丈夫ですか、沢村殿。」
沢村は頭をさすりながら、起き上がった。
「びっくりしました。突然、壁がなくなるなんて・・・。」
そういいつつ、立ち上がってコウを見る。
「なんにせよ、急ぎましょう。」
頷く、コウ。
壁のあった場所を越えて、走る。
階段は数階で終わり、廊下に出た。15.6mはあるだろう天井には、沢山のろうそくが、光を放ち廊下を照らしてる。

「コウさん!あの扉!!」

前方の右手に、微かに開いた両開きの扉が見えてきた。

「行ってみましょう・・・。」
沢村の足に、力が入る。


もうすぐ、相馬さんに会える!何がおきてるのか分からないけど、遠野さんに迷惑だけはかけたくない!

バンッ

思い切り、扉を押し開いた。


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2006.10.05 20:39|いつか見た あの場所で

「そっそんな事・・・っ。」
「ないと、言えるのか?」

言い返そうとした言葉を切られ、言葉に詰まって下を向く。

息・・・苦しい・・・。


頭の中が、ぐるぐるしてる。
確かに・・・、そう。
俺、何度もゲームみてぇだって思ってた。
まだ救世主になるかなんて、決めてねぇのにって思ってた。

声が、でなかった。

・・・図星だったんだ。

宵は、そんな俺を黙ってみていた。
何も言わずに。

何か・・・、言ってほしい。

両脇で握っている拳が、震えている。

・・・ふぅ・・・


宵が一つ、ため息をついた。
「・・・仕方あるまいな。汝は戦いのない世界から来た者。聞くだけ、酷というものであろう。」

恐る恐る顔を上げて、宵を見る。
宵は目の端をあげて、笑っていた。
「・・・宵。」

「・・・、汝。我が、なぜあのような姿になったか、分かるか?」
突然違う話をふられ、でも少しほっとしている俺は、ゆっくりと首を振った。

「この世界は昔、戦いに明け暮れて自らを壊した。その時のこの世界の守護神、それが我だ。」
・・・!?
「えっ?だって・・・?」
宵は、視線を実体の方に走らせ、また戻した。

・・・・・・・・

昔、呉羽がまだこの世界に降りていない頃。
我、宵はこの世界を守っていた。

この世界の民人は、我の話を聞かず、戦いに明け暮れた。
そしてこの世界が滅びようとした時、神が助けの手を差し伸べた。
我と引き換えを条件に、この世界を存続させることを・・・。

我は自身の至らなさを感じ、条件を飲んだ。
そして神が遣わしたのが、呉羽だ。

我はこの宮に閉じ込められ、この牢に閉じ込められ、自分の死を待つのみ。

そこまで話し、宵は俺を見た。
「我はこの体に神界と人界の力を集め、この世界が完全に修復された時、力を放出し、この世界を独立の世に導くのだ。」

「・・・、じゃぁ・・・。」

「そう。その時が、我の最後の時。・・・、後悔はない。ただ・・・。」
「ただ?」

「・・・人界の力が、大分闇に染まっておる。そのせいで、我の体は肥大した。」
人界って俺たちの?

「お前達は、自然を壊し大気を汚し、海を汚した。その力が、我に集まっているのだ。」

俺達のせい・・・?人間のせい・・・?
「大丈夫なのか・・・?そんな力をためてしまって・・・・。」
「はっ。」
宵が自嘲気味に、笑い出す。
「我には止められんよ、流れ来る力を。ただ、力の維持ができなくなったとき、神が我の封印を解いたとき、甚大な被害がこの世界だけでなく人間の世にも向かうであろうよ。」

「そんな!止めることは・・・!」
「できぬ。人間共には、自業自得であろう?この世界がとばっちりを食うのだ。神界は早々に、つながりを切るだろうしな。」

・・・、じゃあ、俺たちが積み重ねてきた自然破壊が、この蒼空界を壊すって・・事。同時に自分の世界も・・・。

宵は、俺をピタッと指差した。
「その大崩壊へのきっかけを、汝の祖先が起こすのだ。葉影がな・・・。」
「・・・っ、だから・・・俺の・・・俺達のせいだと・・・。」

宵の指が、俺の腕をかする。とたん、宵の指の形が崩れ、「何か」が腕にまとわりついた。

「宵・・・。」
「よく、考えるがいい。汝は、いろいろなことを言われて、混乱しておるだけだ。汝は何を望む?」
望み・・・
腕にまとわりついている何かが、ゆっくりと形作られていく。
「・・・・?」
小さな・・・、小人・・・?
ちっさな人の形が、俺の腕に掴まっている。

「・・・人界で虐げられた、木々の妖精だ。我はこの者らの力を借り、昔の我をこうして移しているのだ。」
その言葉を聞き、もう一度小人さんを見る。

表情は無い。ただ、じっと俺を見ていた。

ただ、じっと・・・

「俺の、望み・・・・。」
一言、呟く。
宵は、黙っている。

「・・・、俺の望み・・・、は。皆が幸せな・・・事。どうすればいいとかわかんないけど・・・。」

「幸せ・・・?」

「この世界も、俺の世界も、幸せな事・・・。」

宵は、にっと笑った。

「やっと、言いおったな。」
「え?」

少し明るい声になった、宵を見上げる。
「汝、やっと言いおったな。俺の世界と。」
「え・・・、それは・・・。」

宵は、話そうとした俺の言葉を止めた。

「今まで汝は俺達の世界と、言い続けておった。俺たちが救世主。全て己だけではない、他人の言葉だけで、自分の意思で動いているようにはみうけなんだ。」

・・・そう。呉羽さんが言ったから。他の二人が断らないから・・・。

「汝、その気持ちでよいのだ。この世界を救いますではない。この世界を、自分の世界を救いたい。希望が未来を作り上げる。」

そういうと、木の小人さんたちがふわっと俺の腕から離れて、宵の元へと戻っていった。

「この者達も、その言葉を聞きたかったと、喜んでおるぞ。」

そして、にっこり微笑んだ。

「汝を認めようぞ、救世主よ。」

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2006.10.04 19:22|いつか見た あの場所で

そこには、普通の男が浮かんでいた。
長身の、男。
「え・・・、でも・・・。」

さっきみた、でかいのは・・・・。

呆けている俺に向かって、宵が近づいてきた。

「驚くのは無理もない・・・。さわってごらん。」
そういって、腕を差し伸べる。
俺の理解を超えた脳みそは、言われたとおりの事だけをなんの疑いもせずにやるしかなかった。

「あっ・・・。」

すぅっ

宵の腕を、俺の手が通り抜けた。

「えっわっ・・・。」

その後に、俺の手のひらには、宵の「何か」が、まとわりついている。
慌てて手を振ると、「何か」は離れていき、宵の方に流れていった。

宵は「何か」を体に受け入れると、俺の後ろを指差す。
俺は、何も考えずその指の動きを追って、後ろに視線を動かした。

「・・・宵・・・!」

さっき見た、宵だ。
大きい体をもてあますように、牢に体をもたれさせている。
目は瞑ったまま。

「どういう・・・?」

答えを求めて、宵を見る。
宵は、自嘲気味に笑うと、自分の体を自分の手のひらで触った。

「あれは、実態なのだ。今の我は、自分で作り出した昔の我の体。映像のような物に過ぎん。汝は我には触れられぬ・・・・。」

「え、じゃぁ、昔はあんたの体は普通サイズだったってこと?」

頷く宵を、信じられない気持ちで見つめる。

「・・・、汝。この世界の過去を、呉羽に聞いておったな・・・。」
?呉羽さんの宮で聞いた話か?
でも、なんで宵が知ってる・・・?

「聞いたけど・・・、どうして・・・?」
知ってるんだ・・・?と振り絞るような声で、宵に聞く。

「・・・我は、この世界の中心。意識的に我を排除しない限り、大体の事は夢に見る・・・。」
・・・夢?

「我はあの体になっていくに連れ、眠ることが多くなった・・・。」

「・・・・、知ってるなら!俺たちを助けてくれ!呉羽さんが捕まってしまった今、どうすればいいのか分からない!!」

宵は、その言葉を目を細めて聞いていたが、おもむろに口を開いた。

「・・・、心も決まっておらぬ汝に、その言葉を口にできる権利はあるのか・・・?」

ぎゅっと、心臓をつかまれるような息苦しさ。

「汝、まだ答えが決まっておらぬであろう・・・?救世主になる気構えなど、微塵も感じられぬわ。」

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2006.10.03 17:53|いつか見た あの場所で

聞きたいこと・・・・?
何がなんだか分からない。
つーか、流れでここまできたけど、俺、何にも決めてねーし。
救世主って言われたって、実感ねぇよ。

「ふふ・・・。汝は、一番明快な思考をしておる。だから、選んだ。」
・・・なんだそりゃ
「要するに、ばかってか。」
牢の中の宵は、ゆっくりと・・・本当にゆっくりと座り始めていた。

「その通りだ。・・・・、他の二人は隠し事が多すぎる。真実を答えようとはせぬであろう。」
その通りって、あんた・・・。少しは否定しろよ。

・・・隠し事。
いちいちこいつの話を聞いてたら、謎ばっか増えるっての。

「汝に言わぬ隠し事、あるようだがな・・・・?」


「だから何?」
面倒だな。
「隠し事するってことは、俺に言う必要がないからだろ?ただ、黙ってるってだけじゃないか。いちいち、聞かなきゃいけない事じゃない。」
ごぼごぼごぼ・・・
牢の中に、泡が立ち始めた。

「宵、どうした?何か起こっているのか?」
遥が、不思議そうに宵を仰ぎ見る。
牢の中で、宵が俺に向けて手を伸ばした。

「・・・?」

「・・・、はい。宵さま。」
突然一太の声が、いつもにもどった。
「一太?」
一太は、そのまま俺の側に来ると、牢の空間においている手とは反対の手のひらを、俺の胸に押し当てた。

「一太?何・・・・?」

「相馬。」
一太の声。

「いってくるさ。」
「は?」

視界が一瞬歪み、いきなり目の前が青一色になった。

「・・・がぼがぼがぼ・・・!」


うっそだろ、いきなり水の中!!
くるしぃ・・・

何が起こったのかわからずもがいていると、突然呼吸が楽になった。
「相馬。落ち着け。今汝は、我と同じ空間におるのだ。」
「・・・宵?」

楽になった呼吸をむさぼるように、深呼吸を何回か繰り返した後、辺りを見回した。
青い空間の中に、自分はいた。
向こうに牢の銀の棒が見える。そして足元には、こちらを見上げている一太と遥。

空間の中は、体験したことないけど無重力地帯のようだった。
何か液体で満たされているように思うけど、息はできる。

「相馬・・・。」
後ろを見ると、そこには、・・・
「え・・・、あんたが・・・宵?」

テーマ:自作小説
ジャンル:小説・文学

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Author:kazu osino
名前  kazu osino
生息地 関東のとある家。
英語の苦手な、ちゃっかり主婦。
ブログ内記事、文章は無断転載
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する方、いないと思いますが。
よろしくお願いいたします。

…プロフの画像を載せる事によって、
お金が入ってきたらいいなとか
お、思ってないんだからっ(笑

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